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2013/03/22 競業避止

経済産業省が委託調査研究でとりまとめた報告書のうち、広く公開するにふさわしいものとして
「人材を通じた技術流出に関する調査研究報告書」が3月に公表された。

調査をしたのは三菱UFJリサーチ&コンサルティング。
雇用形態の多様化や人材の流動化等の影響により、営業秘密を争点とした裁判例は増加傾向にあり、
特に退職者等の人材が絡んだ営業秘密の流出が深刻な問題となっている。 
そこで、人材を通じた営業秘密の流出実態等を把握すべく、我が国企業1万社に対し、
アンケート調査等を実施するとともに、人材を通じた営業秘密の流出を防止するための対応策として、
競業避止義務契約等の在り方について、裁判例調査や有識者による分析・検討を行ったものとあり
興味深い報告書となっている。

平成24年度 人材を通じた技術流出に関する調査研究
http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/hokoku.html

序章として以下のように書かれている。

    グローバル化や情報化、人材の流動化等が進展する中で、我が国企業の競争力の源泉となる
    技術情報、中でも秘密情報の適切な管理がより一層重要となっている。技術情報の適切な管
    理を促し、その保護を図ることは、継続的にイノベーションを生み出し、我が国における生
    産性向上に向けた取組が継続的かつ発展的になされる基盤を確保する鍵となるものである。

    その一方で、雇用形態の多様化や人材の流動化等の影響から、営業秘密を争点とした判例は
    増加傾向にあり、その主な漏えい経路として退職者等が絡んだ営業秘密侵害が深刻となっている。

    しかし「営業秘密」に該当する情報と言えるためには、不正競争防止法が定める、
    @秘密として管理されていること(秘密管理性)、A有用な情報であること(有用性)、B公然と知られていないこと(非公知性)という3つの要件を満たしている必要があり、企業が守りたいと考えている情報が常に「営業秘密」に該当する訳ではない。


    このような退職者等の人を通じた企業秘密の流出を防止するための策としては、不正競争防止法に基づく請求の他、競業企業への転職そのものを禁止する競業避止義務契約を締結することも考えられるが、必ずしも競業避止義務契約の活用実態や、その有効性については明らかにされているとは言えない。

筆者の知る限り営業秘密を保護する措置として
競業避止義務契約を締結しているケースは極めて稀である。
多くの場合は就業規則や入社時の非開示契約で足るとの判断に基づくと思われるが
やはり雇用関係が解除されれば契約の有効性には限界がある。

競業避止義務契約は退職者にとって職業選択の自由を制限する可能性もあり
躊躇しているといったケースもあるようだが問題の本質はそれではない。
企業の競争優位性を維持するために重要な情報資産や営業秘密を厳格に管理することは
国際競争が激化する中では不可欠な要件であることは多くの事件が示唆している。

また競業避止義務契約について、企業の守るべき利益は
不正競争防止法の「営業秘密」に限定されるものではなく
営業秘密に準じるほどの価値を有する営業方法や指導方法等に係る
独自のノウハウについては営業秘密として管理することが難しいものの
競業避止によって守るべき企業側の利益があると判断されやすい傾向があると分析されており
知的資産(知的財産を含む)も該当するものと思われる。

中小企業に対する知的資産経営が叫ばれて久しいが
企業競争力の源泉となる知的資産の保護と活用を推進するためにも
競業避止義務契約もその一環として検討する余地があるだろう。
難しいテーマではあるが守るべき手段を知ることの重要性が再認識できる報告書である。


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