企業競争力の源泉となる知的資産の保護と活用で競争優位性と収益確保をサポートします
知的資産とは「従来のバランスシート上に記載されている資産以外の無形の資産であり、企業における競争力の源泉となる、人材、技術、技能、知的財産、組織力、経営理念、顧客とのネットワークなど、財務諸表には現れない経営資源の総称です。
このような状況下では、競争力の維持または強化のために無形の経営資源である技術やノウハウなどを自社の強みとして的確に把握したし上で適切に活用し、他社との差別化を鮮明にしていく必要があります。営業秘密を適切に管理することは、差別化による競争優位性を持続させる「知的資産経営」への取り組みの一貫として位置づけられるでしょう。
経営環境の変化と影響
平成17年3月「企業における情報セキュリティガバナンスのあり方に関する研究会」(座長:土居範久中央大学教授)報告書において、情報セキュリティガバナンスとは、「コーポレート・ガバナンスと、それを支えるメカニズムである内部統制の仕組みを、情報セキュリティの観点から企業内に構築・運用すること」と定義されました。
その後、具体策として、情報セキュリティ対策ベンチマークの活用や企業の情報セキュリティの取組の中でも社会的関心の高いものについて情報開示することにより、当該企業の取組みが顧客や投資家などのステークホルダーから適正に評価されることを目指す「情報セキュリティ報告書」のガイドラインも示されています。
情報セキュリティへの取組みは、適切なリスク管理による“利益の保護”と、ステークホルダーへの開示をもって“企業価値の向上”という大きな成果に結びつくものと考えます。
営業秘密と特許の違い
| 営業秘密(不正競争防止法) | 特許(特許法) |
保護の目的 | 経済活動における不正行為の防止 | 産業の発達に寄与 |
法的構成 | 一定の行為を規制、相対的な権利 | 排他的権利の付与、独占排他権 |
保護の対象 | 事業活動に有用な技術上又は営業上の情報 | 自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの |
対象の明確性 | 不明確である | 請求項の記載により明確である |
公開の有無 | 公知になれば保護要件を失う | 出願は公開される |
権利の存続期間 | 保護要件を満たす限り無期限 | 出願から20年 |
費用 | 秘密管理のコスト | 出願・維持費用 |
長所 |
保護対象の範囲が比較的広い
公知にならない限り保護期間は無期限
内容を公開する必要がない
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後願者を排除できる
技術的範囲が明確であり、権利の存在の証明が容易である
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短所 |
公知になると以後保護が受けられない
他社が特許を取得すると支障が生じる
秘密としての管理にコストが掛かる
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新規性・進歩性等の要件が必要
審査を経て権利化される
保護期間は有限である
出願手続、特許料等の維持費用が掛かる
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▲「ノウハウの戦略的管理マニュアル」東京都知的財産総合センターより引用
営業秘密の法的保護
企業が秘密として考える情報の中で、秘密管理性、有用性、非公知性の3要件を満たしたものが「営業秘密」に該当し、不正競争防止法の法的保護が担保されます。
- 秘密として管理されていること
秘密管理性とは、事業者が情報を主観的に秘密として管理しているだけでは不十分であり、客観的にみて秘密として管理されていると認識できる状態にあること。
- 事業活動に有用な情報であること
有用性とは、その情報の保有者の主観によって決められるものではなく、客観的に有用であることが必要であり、事業活動に使用されたり、使用されることにより費用の節約、経営効率の改善等に役立つもの。
- 公然と知られていないこと
非公知性とは、その情報が刊行物に記載されていない等、情報の保有者の管理下以外では一般に入手できない状態にあること。
【営業秘密として管理すべき情報資産の例】
情報資産分類 | 情報資産分類に該当する主な情報の例 |
経営戦略に関する情報資産 | 経営計画、目標、戦略、新規事業計画、M&A 計画等 |
顧客に関する情報資産 | 顧客個人情報、顧客ニーズなど |
営業に関する情報資産 | 販売協力先情報、営業ターゲット情報、セールス・マーケティングノウハウ、仕入価格情報、仕入先情報等 |
技術(製造含む)に関する情報資産 | 共同研究情報、研究者情報、素材情報、図面情報、製造技術情報、技術ノウハウなど |
管理(人事・経理等)に関する情報資産 | 社内システム情報(ID、パスワード)、システム構築情報、セキュリティ情報、従業者個人情報、 人事評価データなど |
その他の情報資資産 | 上記以外の情報資産 |
不正競争防止法の刑事罰
- 悪質な行為は、刑事罰の対象
営業秘密の不正な取得・使用・開示行為のうち、悪質な行為を行った者は刑事罰(営業秘密侵害罪)の対象となります。罰則は、10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金が科される(併科あり)。
- 国外犯も刑事罰の対象
日本国内で管理されている営業秘密を海外で不正使用・不正開示する行為も、刑事罰の対象となります。
- 法人も処罰の対象
営業秘密の不正な取得・使用・開示行為については、それを行った行為者のみでなく、その者が所属する法人も処罰の対象となり、3億円以下の罰金が科されます。法人の処罰については、従業者の選任・監督に関して法人の責任が問われることになります。
マネジメントシステムの構築
このように、不正競争防止法における罰則が強化されてきた背景には、営業秘密が侵害されることにより保有する企業の競争優位性が失われ、最悪の場合は事業継続までも脅かす結果を招くからです。
当社では、不正競争防止法の法的保護を担保し、実効的な管理体制を構築するために、経済産業省の「営業秘密管理指針」に準拠した営業秘密保護のための管理方針等の策定(Plan)、実施(Do)、管理状況の監査(Check)、見直し(Act)のマネジメントサイクルを確立するサポートしています。